俺の幼馴染み。
そいつは随分と変わったやつで、振り回されたことは両の手を使っても数えきれそうにない。
それは高校生になった今でも変わらない。
今日はそんな思いでの一つを思い出した。
----10 years ago----
小学生に上がったばかりの頃のこと。
俺はこの土地に越してきたばかりで、友達はまだいなかった。
俺の学校は小中高大一貫性で、土曜も午前中授業があるけど、勉強は嫌いじゃなかった。
むしろ、孤立していると勉強くらいしかやることが無い。
授業が終わって帰路につくと、途中にある公園で誰かが遊んでた。
俺は大して気にせずに通りすぎた。
けど、それから毎日俺はそいつを見かけることになった。
綾部喜八郎というらしいそいつは、一つ年下のお隣さんだった。
ふわふわとした髪の毛で、俺もよく言われるけど、女子のように可愛らしかった。
「喜八郎。」
よくわからないが、親同士は随分と意気投合していて、いつの間にか俺は喜八郎の保護者のようになっていた。
学校帰りに連れて帰るのが主な仕事。
喜八郎は本当に変な奴で、暇さえあればとにかく土いじりをしている。
2つ年下の彼は4歳で、年相応と言ってしまえばそれでもいいのかもしれないが、それにしたって土いじりしかしないのはいかがなものか。
どうやら幼稚園等でも特別仲のいい友人はいないらしく、そのあたりで妙に親近感を覚えた。
結局俺は小学校で特別友人に恵まれないまま7月に入っているのだ。
もうすぐ夏休みだが、他の同級生とは違い、普段の休日とそんなに変わらない毎日を過ごすのだろう。
「喜八郎、帰るぞ。」
「兵助、うるさい。」
「今日のおやつのプリン、要らないのか?」
「…いる」
「今帰らないと俺が食うぞ」
「…帰る」
大抵毎日こんな感じで、俺と喜八郎は帰路につく。
最初の頃はだいぶ苦労したけど、最近では慣れたものだ。
…と、思っていたのだが。
「あんのばか…っ!」
夏休みに入ってしばらくした頃、7時ごろにお隣さんが喜八郎のことを聞きに来た。
なんでも家に帰っていないらしい。
夏休みは学校がないから、一時保護者はお休みで、俺はその日喜八郎に会っていなかった。
いつもの公園でも見つけられなかったようだ。
そして俺は、晩御飯そっちのけで、そう、その日は大好物の豆腐の味噌汁で、それをそっちのけにしてまで喜八郎を探しに出かけた。
----------Now----------
「…あれ、その後どうなったんだっけ…?」
「なにがですか?」
隣に歩いているのは喜八郎。
俺が高1で、喜八郎は中2だ。
それでも保護者は免除にならず、今でも一緒に帰る日々が続いている。
まあ、大川学園は小学部からエスカレーター式だから仕方ないと言えばそうだが。
「ほら、10年くらい前、お前夏休みに家に帰ってこなかったことあったろ。」
「ああ、4歳の時?ですか?」
「そうそう、探しに行った記憶はあるんだが、そのあとどうなったか覚えてないんだ。
喜八郎は覚えてるか?」
「……いいえ?」
「そうか…うーん…まあわからないなら仕方ないよな…」
元々大したことではないのだから。
「兵助先輩は、覚えておられないのですね」
「? なにか言ったか?喜八郎。」
「いいえ、兵助先輩の耳がおかしくなったんじゃないですか?」
「おま…。」
今でもこんな調子の幼馴染に、俺はいつだって振り回されているのである。
たぶん、この先もずっと。
------Side Kihachiro------
あの頃のボクの世界は完全に閉じていて、凄く狭くて、その世界に居るものがすべてだった。
突然その世界に入ってきたよそ者はなぜかとても居心地が良くて、毎日一緒に居た。
なのに、いきなり来なくなるものだから、なにか不安を覚えてうろうろしていたのだ。
「兵助先輩は、覚えておられないのですね」
「? なにか言ったか?喜八郎。」
「いいえ、兵助先輩の耳がおかしくなったんじゃないですか?」
「おま…。」
あの日、結局公園に戻ってきたボクをこの人は見つけて言った。
『なにしてんだ!』
『…別、に』
『別にじゃない!勝手にいなくなるな!』
『さ、先に居なくなったのは兵助で…』
『じゃあ俺はいなくならない!!』
あのまっすぐな目でそんなセリフを言うものだから、幼いボクでも素直にこくりと頷いた。
あの時の気持ちはまだ鮮明に覚えていて、嬉しいもので。
これから先もきっと、ボクはこの人と一緒に居られると思う。
たとえ、どんな形だとしても。
友人は大変なネタを私に授けました。現パロです。
くく綾っていうよりか、くく←綾と見せかけたくく(→)←綾です。ワカリニクイ。
綾部は本気で慕ってて、久々知は無自覚な片思いみたいな感じでしょうか?
なんだかんだ言いながら大学に進学してなお一緒に下校とかしてそうです…
綾部は中学生になってから先輩呼び&敬語にしました。
顔よし頭よし性格はかっこいい久々知と仲が良いだけでなにかと聞かれて面倒なので、区切りを付けるように。
まあ話してる内容は全く変わってないのですが。
くく綾可愛いですね!ありがとうございましたー
お題:「確かに恋だった」より